慶應学生対談イベント〜その⑤後日対談

FiNA理事3名でさらに「学生が選ぶ福利厚生3.0」について話しました。

1)Z世代の学生が企業に求めるものとは

岩城:前回の記事で(リンク)で企業選択のポイントの一位は「安定している会社」で50%、二位が「自分のやりたい仕事ができる会社」で30%、三位が「給料の良い会社」で21%で、「勤務制度・福利厚生が良い会社」というのは10%程度でしたというお話をしました。

しかし、グラフをよくみてみると、2015年卒以降の学生では「安定している会社」の項目が上位へ上がっていき、20年卒ではトップになっています。
これについて、「企業に対して安定性を感じるポイント」を調査した結果があります。

マイナビ2023年卒大学生活動実態調査(3月)より抜粋

1位が「安心して働ける環境である」、2位が「福利厚生が充実している」です。 なんとZ世代は、「福利厚生の充実」を求めているんですよね。さらに、「安心して働ける環境」とはどんな環境を思い浮かべるかという問いに対しては、「社風が自分と合っている」「福利厚生・各種制度」と続きます。

マイナビ2023年卒大学生活動実態調査(3月)より抜粋

石川:こうした情報をもとにZ世代の採用を考えると、安心して働ける環境であることを証明する要素として、福利厚生制度の積極的な公表が求められているように感じます。
また、社風については、従業員一人ひとりの価値観や、行動、人間関係などで作られるソフト面と、組織において明文化された様式やルールなどに基づいて作られ、目に見えるハード面の二つがあるかと思います。
社風を醸成する要素のうち、少なくとも目に見えるハード面は開示していくことがZ世代から見て魅力的な会社になるファーストステップかもしれません。

森:当社の社会人の若い方々にお聞きしたのですが、この項目は特に女性は知りたい情報のようです。結婚から出産、育児と続いていく女性には、この「安心」キーワードは重要ですね。
就活時は就職するのに精一杯でなかなか注目できていないとのことですが、入ってから気づくことが多いようです。

岩城:そのようなギャップが生じないためにもFiNAでは情報発信していきたいですね。

マイナビ2023年卒大学生活動実態調査(3月)より抜粋

岩城:こちらの結果で、さらに福利厚生を意識している学生さんが多いことがわかります。
「福利厚生制度の充実度によって志望度は変わりますか」の質問では「大きく変わる・少し変わる」の合計が文系理系共に90%以上です。
「福利厚生の充実度に惹かれて入社を検討した企業はありますか」の質問には文系理系の約70%が「ある」と答えていますね。

石川:私自身は新卒入社を決めた会社の要素で福利厚生はあまり重要視していなかったので、少し驚きの結果です。
一方で、私は大学が理系だったのですが、周りの友人たちは確かに福利厚生が充実している企業に入社する傾向が強かったと思います。
こうしたことからも福利厚生制度の積極的な開示を行うことで、Z世代の採用戦略に大きな効果があるのではないかと感じます。

森:気になる情報ですよね。繰り返しになりますが、就活時には福利厚生までの情報が入らないため、気にはなるんだけど、なかなか中身が分からず入社する方々が多いのが実情でしょう。
すでに取り組んでいることが多いが入社しないと気が付きにくいけれど、間違いなく貴重な情報ですが、多くの会社は詳しい福利厚生情報を役員も知らない、知っているのは人事課長だけ、と言う状況も否めません。

岩城:学生さんの意識を変える仕組みも必要ですね。大学時代に就職先を選ぶときに、企業の福利厚生や企業年金制度を知る機会を増やすべきでしょう。

続いて、「就活を投資て企業の福利厚生・各種制度において重した項目」についてです。私たちFiNAの「学生が選ぶ福利厚生3.0」の「企業を知る」の項目にもありますが、
・土日祝日以外の休暇制度
・子育て支援制度
などが上位ですね。

マイナビ2023年卒大学生活動実態調査(3月)より抜粋

岩城:就活生の方や入社1、2年の方にお話を伺うと、自分の成長につながる環境と実益、貢献に応じた給与などの待遇とのバランスを強く求めているのを感じます。

石川:そう思います。私たちの「学生が選ぶ福利厚生3.0」の意義について、個人的には、学生自身が生きていく上で大切にしたい価値観や企業に期待することを見つめ直すきっかけなればと思っています。例えば、「福利厚生の充実」と一言で言っても、会社ごとで取り組みは異なりますし、安心して働けるかどうかは別物です。そうした中、「福利厚生3.0」の項目を見て、自分自身に合った福利厚生や各種取り組みを行う企業を探してもらうことに価値があるように思います。

また、岩城さんのおっしゃるように、やりがいや働きやすさがあったとしても、労働に対して報酬が見合わないと感じて離職する若手層は多いと思います。FiNAの取り組みとして、各企業の生涯賃金の見える化なども取り組んでいきたいです。

森:どの企業も、大雑把に言って、定例的な仕事とチャレンジングな仕事に大別できます。前者は人が会社の歯車となるような地味な仕事、後者は未来につながる新しい仕事です。やはりどの会社でも両方ともが必要不可欠です。だからこそ、働きが適切に評価され、やりがいをできるだけ高めてくれる企業に入りたいですよね。そのためには目に見えない価値ですが、やりがいという無形価値を企業が積極的に発信し、就活生のニーズに応えてもらいたいと思います。

岩城:私たちの「学生が選ぶ福利厚生3.0」の大きな特徴の一つに、企業での「資産形成・投資教育の実施」がありますね。大学や企業での投資教育をしていると、学生さん、新入社員の皆さんがこのような研修を望んでいることがわかります。

石川:私も岩城さんと同じ意見です。若年層向けの投資教育の現場では、「研修を受けて良かった!」「思ったより日本に希望が持てた!」といったポジティブな声を聞くことが多いように思います。

岩城:そうそう。私も大学で資産形成の講義をしたとき、「自分の老後はカツカツで、ただ時間が流れていき、気づいたら死んでいると想像していたので、やれることがあると知り、老後に希望が持てた」というご感想をいただき、大学生のうちに企業年金・私的年金についても学ぶ機会をより積極的に設けることが重要だと感じます。


石川:他に、「将来国の年金ってもらえないんでしょ!」とか「老後までに2000万円以上貯めて子育てとか絶対無理でしょう」といった誤解も、公的年金の財政状況や制度の仕組みを正しく理解し、長期積立分散投資でお金にも働いてもらう効果などを理解するとで、考え方が大きく変化することはよくありますよね。
若年層に金銭面で安心して働いてもらうためにも金融教育が重要だということを企業は理解すべきです。

岩城:絶対重要です。でも実は、役員の人もわかっていないケースは多いんですよね。従業員だけでなく役員を含めて金融・投資教育は必要です。職域で実施するのが効率的ですね。

森:そうですそうです。企業の金融・投資教育は重要です。私も長期投資家ですが、投資を勉強することで、企業価値って何?ということや企業経営のノウハウなども学べます。投資を通して、自分自身の将来のお金である企業年金を増やしながら、金融リテラシーを向上させることができます。
企業としては、従業員が若い時から経営者としての事前勉強もできるという、一石二鳥な取り組みになります。

岩城:FiNAとしても、さまざまな大学で「キャリア選択と公的年金・私的年金について」の講義を行なっていきたいですね。
投資は怖いとか、投資をするのは一部のお金持ちだけ、頭の良さや知識がないとできないというイメージを持っている学生さんも、講義を受けていただいた後は、「自分のライフプラン、キャリアプラン、それに合わせたマネープランを長期的に考えたい」「ライフプランに合わせて公的年金や企業年金などをどのように形成していくかビジョンをつくりたい」と変化しています。

公的年金・私的年金についてや投資の基本知識などを学生時代に学ぶ意義は非常に大きいです。現実問題として、多くのDC導入企業では入社後すぐにDCの商品選択をしなければなりませんし、資産形成には長い期間が必要です。なるべく早い段階で正しい知識をもつことで、今後の人生がより良いものになると思います。

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