慶應学生対談イベント〜その③

日本が置かれているマクロ経済状況を注視せよ

1)人口減少に逆行している某大学?

橋野: 日本は人口減少が問題視されているにも関わらず、大学の数が多すぎると思います。元気の有り余っている若い人を無暗に大学へ通わせるのではなく、労働力として働いてもらった方が人手不足の解消に繋がるのではないでしょうか。

橋本:少し趣旨とは違いますが、無差別に学生を受け入れ、補助金を受け取りながら学部を増やし続けるというようなことがあるならば、それは人口減少時代に逆行しています。

 大切なのは、日本の状況が変わっていくということです。変化は遅いですが、それに慣れていく必要があります。
ひとつには、移民を積極的に取り入れるべきだと思います。高齢社会に突入した日本では、介護者不足が大きな問題になっています。その点、台湾では、多くの外国人が働くことで介護が充実しています。また、フィリピン人などが家庭の中で子供たちに英語とマナーを教える役割も担っています。台湾の半導体企業「TSMC」の幹部クラスの家庭にも、多くの外国人が働いています。台湾政府は、これらの外国人労働者のための資産運用もサポートしていると聞きました。彼らは台湾で働くことで相当な額を稼ぐことができます。日本に行くと、不法就労者のような扱いを受けることが多いですが、台湾は多くの外国人にとって魅力的な憧れの国となっています。介護や家庭教師のような重要なエッセンシャルワーカーが台湾を積極的に選んでいるのです。結果、外国人労働者が、台湾の国際化や経済安全保障に貢献しています。実は、台湾が英語を話し、国際化を進めることで、アメリカに近づき、中国に対する経済安全保障の強化を図る戦略の一環です。日本ではほとんど報じられていませんが、国家戦略としてのキーの一つは、フィリピンやインドネシアの人たちに対して台湾の資産運用施策が充実しているということなのです。学生が企業を選ぶときの基準に、企業年金等福利厚生が入っていないということ、その価値に気が付いていないのは残念です。

 現実に年金制度というのはソフトパワーとして非常に強いものだと思っています。日本はアニメのファンが多いため、アニメをきっかけに外国人が訪れると思い込んでいます。しかし、それは古いです。年金制度など外国人に対して手厚いサポートを提供し、日本に来れば一財産築いて帰ることができるような環境を整えることが、人口減少の中でエッセンシャルワーカーを確保するために重要です。「高齢者の介護は誰がするのか」という現実問題に直面して、積極的に外国人を受け入れる方策が必要だと考えています。

 アジアの人々が日本に憧れているという幻想は捨て去るべきです。例えばタイでは、Netflixの上位番組はほとんどが韓国ドラマですし、日本のアニメも韓国のアニメだと誤解されている場合もあります。留学先として韓国が日本よりも人気があるのが現実です。日本はもう少し現実を直視し、適切な戦略を立てる必要があります。

岩城:個人の豊かさを示す1人当たり名目GDPは、アジアでは1位シンガポール、2位香港、3位ブルネイ、4位日本ですが、日本は2031年に韓国、33年に台湾に抜かれると試算されています(2022年IMF統計)。アジアの中で日本が最強だった時代はすでに終わっています。

2)大学生よ、さてどうする?

石川:学生のみなさんに資産運用や企業年金等に興味を持ってもらうためにはどうすべきでしょうか。

橋野:ほとんどの学生は関心がありません。楽しさのベールを引き剝がし、現実的な将来の不安を喚起することで、学生の関心を引き出すことが重要ではないでしょうか。

三田:考えて行動している人もいます。日本だけじゃ生きていけないと思っている人は留学に行くなどしてより広い視野を身につけようとしていますし、資格取得をする人もいます。一方で何もやっていない人もいます。関心がないというのは橋野君が言った通りですね。やっている人とやっていない人の差が大きいです。やっていない人は置いていかれていて、やっている人は進んでいるという印象です。

橋本:価値観を押し付けるわけではないですが、リアルな話です。私の場合は26歳で結婚し、27歳で子供が生まれました。今48歳で、上の子は大学生で、下は高校3年生で受験を控えています。つまり、あと4年ほどで子供たちが独立します。これは私にとっては良い選択だったと思っています。一方で、40代で3歳の子供がいる、ご家庭もあります。もちろん望まれてそうなっているということもあります。それはそれで幸せだと思いますが、働いて稼ぎ続け、資産を形成し、取り崩しながら老後を生きる現実を考えた時、この問題にどう対処するのかも見過ごせない現実だと思います。

岩城:子供が大学を卒業するまであと約20年ですね。マネープラン的には、教育費負担と老後資金の準備、あるいは住宅ローンも重なることになります。

橋本:誰と結婚し、どんな仕事をするのか、子供はどうするのか、どんな生活を送るのか。結婚しない、子供を持たないという選択もありますが、私のように26歳で結婚した、というふうに考えると20代の大学生の方にとっても、遠くないリアルです。毎日の楽しみだけで過ごすことはできません。子供一人育てるのには数百万円、あるいは教育次第では1千万円以上かかるかもしれません。

橋野:まずは将来の話を友人たちとすることが大事ですね。堅苦しい話だと思って大学生はあまり話したがらないのですが。

橋本:同調圧力に屈してしまっている人たちが声を上げず、資産形成には決して手厚くない企業に使い倒されることは残酷です。日本全体としてもそれは良くないと思います。優秀な労働力として資産形成面でも十分にサポートを受けながら、企業を良い方向に導くような存在になれば良いと思います。

橋野:自分の将来に興味のない学生たちに「学生よ、立ち上がれ」と伝えることが重要だと思います。既に行動を起こしている人々のみのサークルで終わるのではなく、大人の方々には将来を考えることをしていない学生たちにも寄り添ってあげてほしいと思っています。

4に続く

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